ジェットスリッパーズ!

望月がコーチング技術をまとめ、みんなで遊ぶためのブログ。

【8】RASさんのお仕事

ぜんかいのおはなし:

脳が情報を受け取るかどうかの基準は、「いままでの自分にとって重要だったかどうか」である。

 

脳は目の前の世界を見る際、昨日までの記憶に照らし合わせて、重要だったものだけを選んで現実としてとらえている。その過程で、重要でなかったもの、あってもなくても変わらないものは無視される。

このとき、脳のなかで起こっていることを説明させてほしい。

脳機能としてその役割を担っているのは、視床下部(目の奥、脳の底の部分と視神経のつなぎめ)にある「網様体賦活系(Reticular Activating System)」と呼ばれるもので、縮めてRASと呼ばれることが多い。望月も親しみをこめてRASさんと呼ぶことにする。

 

このRASさんのお仕事はいままで見てきたように「重要な情報とそうでないものの仕分け」である。イメージは超有能な秘書だ。上司である脳のために、身体からあがってくる全情報をRASさんひとりで仕分けている。蓮舫さんもびっくりのスーパー秘書さんなのである。

RASさんは超優秀だが、秘書という役割ゆえにひとつだけできないことがある。それは、「考える」ということだ。RASさんのお仕事は与えられた基準に徹底的に従って情報を仕分けることであって、上司が与えたその基準に「どういう意味があるのか」を考えることはできない。

 

RASさんは僕らにいつも滅私奉公してくれているが、僕らがなにか新しいことを始めようとしたとき、まっさきに立ちはだかるのもこのRASさんである。

たとえば、僕らが外国語を覚えようとしたとしよう。

このとき注意しなければいけないのは、RASさんにとって、「昨日まで覚えなくてよかったこと」は、まったく重要ではないということだ。

RASさんは脳の仕事をひとつでも減らすためにあらゆる情報を削減しようとしているので、「昨日まで知らなくてもなんとかなっていた情報」はまっさきに捨てられる運命にある。

 

外国語を覚えようとすれば、なんとかしてRASさんを説得しなければならない。

いきなり外国に住んでしまうというのは、そういう点で有効な手段である。

その国の言葉を覚えなければ、パンひとつ買いに行けない。

 

まずい、このままでは本当に飢え死にしてしまう。

話せる人がいなくて寂しくて死にそう。

 

このようなとき、脳が「このままでは生きていけない」と判断して新しい基準へと切り替える。大音量のクラクションを鳴らしたトラックが突っ込んでくるのと同じレベルの緊急事態であると判断されるわけだ。

ひとこと付け加えるなら、一時的に脳に基準を書き換えてもらうだけなら、あまり難しいことは考えないでよい。「赤いものを探せ」という言葉ひとつで脳の基準が簡単に書き換わるのは体感してもらえたと思う。 

jetslippers.hatenablog.com

問題は、それを永続させたい場合だ。

「赤いもの」をRASさんの手を借りて探せるのはほんの一瞬である。

意識の上で基準を書き換えた程度では、それはすぐに赤いものに目もくれない「いつもの自分の基準」に上書きされてしまう。脳のなかに「まったく新しい基準」を植え付けて育てていくことはできない。

 

さて、とはいってもRASさんを説得するために、ほんとうに生命の危機を感じる必要はない。ようは、そんな事態に直面しなくても、命の危機を感知するセンサーにさえ引っ掛かればRASさんは基準を変えてくれるのだ。

そのセンサーもまた脳のなかにある。

 

「まずい、このままでは本当に飢え死にしてしまう」

「話せる人がいなくて寂しくて死にそう」

 

そのセンサーに触れるための条件を、うえのふたつの例文から読み取れるだろうか? 

ふたつの文章に共通する点があるとすれば、それはなんだろう?

 

 

答え。それは、強烈な感情である。

 

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追記:

昨日のオフ会にいらした方、来ていただきありがとうございました!^^


ひとのまえで話すと、自分のなかに貯めこんできたはずのものをあまりうまく説明できないことに愕然としてしまいますね(笑)


もっともっとうまくなりたいな。