ジェットスリッパーズ!

望月がコーチング技術をまとめ、みんなで遊ぶためのブログ。

【12】夢のストーリー

ぜんかいのおはなし:

人生における成功のカギは、未来の記憶をつくりあげることである。

 

 

自分のいちばん古い記憶を引っ張り出せるだろうか。

ちなみに望月のいちばん古い記憶は、当時住んでいた静岡にあった家のそばの三角形の堀のほうなものに池があって、そこに泳ぐカモを見ている、というものである。いくつなのか忘れたが、白くてぶあついガードレールより背が低かった、と思う。

 

さて問題。思い出してもらったあなたの記憶は、どれくらい正確なのだろう?

僕らは幼いころ、目に見たその景色をそのまま覚えているのだろうか?

 

だとすれば。だとすれば、あなたの記憶は、あなたの目から見た景色であるはずだが、たぶん違うだろう。いちばん古い記憶のなかで、不思議なことにあなたは「あなたの姿」が見えているのではないだろうか。

 

目から見た記憶ではないのだ。

その記憶は、当時の自分のものではない。

では、だれのものなのか?

 

もちろん自分のものだ。

ただし、いまの自分のものである。

正確にいえば、あなたはその記憶をさっき思い出すときに作り出したのだ。

 

これは記憶の再生の根本的な誤解であるといえる。

僕らは、ものごとをそのまま記憶したりしない。

すべて記憶は、いったん「色」「音」「におい」「形」「いたひと」「その表情」「顔の輪郭」、そのときの「感情」といったレベルまでばらばらに分解される。

そして、思い出すときに記憶を再合成する。

もちろん再合成の際にはRASさんの検閲を受けているので、95%の情報は捨てられて、5%の「ピュアな」思い出だけが残っている。

 

僕らは、正確には過去を思い出してなどいない。

過去を思い出しているようでいて、僕らはそのつど新たに記憶をつくりだしているのだ。

 

記憶は、ずいぶん簡単に改竄される。

都合の悪いことは忘れていくし、都合の良いことだけが脚色されて思い出される。

ならば、未来の記憶をでっちあげることもまたそう難しくはないはずだ。

 

 

ひとはだれでも夢を見る。

夢は、ばらばらになった過去の断片が無作為につなぎ合わせられることによって生み出される。ただし夢にはストーリーはない。僕らが見たと思っている夢のストーリーは、僕らが思い出そうとした瞬間に、思い出せる範囲の映像をつないで僕らが即興ででっちあげた代物だ。

 

「なぜそうなったのか」という前後のストーリーがよくわからなくても、脳は鮮明なイメージをつくりあげることができる。これは重要なことだ。

目標を設定するとき、その目標に裏付けはいらないのだ。

成功に必要なのは、強い感情をともなった鮮明なイメージである。

到達すべきイメージが、あなたの夢やいちばん古い記憶と同じレベルで思い出せるようになったとき、僕らの脳は勝手にストーリーをでっちあげる。

 

こうやれば成功できる、そういうストーリーを。

【11】海馬と偏桃体

ぜんぜんかいのおはなし:

ある体験や情報を記憶するのにもっとも効率の良い方法は、その体験や情報に強い感情を結びつけることである。RASさんは情報に激しい感情が結び付いている場合、無条件で生死にかかわる情報と判断し顔パスしてくれる。

 

 

また自分の頭のなかを覗いてみよう。

僕らはどのようにモノを覚えているのだろう?

 

RASさんに通された僕らの記憶を保管しているのが海馬である。

自分の頭にカチューシャをつけてみよう。それがそのまま小さくなって頭にずぶずぶと沈んでいって、頭の真ん中あたりに来たものが海馬だと考えてくれればよい。歪曲した変な形をしている。カチューシャが脳のなかにあったら痛そうだ。

 

よく知られているように、海馬は記憶を2週間ほど貯めておける。

2週間まったく同じ記憶を使わないと、海馬はもう思い出さなくてもよいものと判断して、その記憶をタンスの奥にしまいこんでしまうので、つぎ思い出そうとするともはやどこにしまったかがわからなくなり、思い出せなくなってしまう。

 

もし2週間以内に複数回思い出すことがあれば、海馬は大脳皮質に情報を送る際に「よく使うようのタンスにつるしておいてください」とタグをつけてくれるので、大事な情報は大脳皮質で長期記憶化されることとなる。

 

 

さて、海馬カチューシャの両端に、どんぐりのような飾りがついている。

カチューシャが頭についていたら、耳のあたりにどんぐりがあるイメージだ。左右にひとつずつついている。このどんぐりもいっしょに頭に沈めていこう。ずぶずぶ。

 

どんぐりは偏桃体という名前で呼ばれている。偏桃体は、感情をつかさどる部位だ。感情が大きく動くと左右のどんぐりが発火し、体験に感情的な意味づけをする。

 

 

ここに偏桃体を手術によって取り除いてしまった男がいたとする。

偏桃体の役割がよくわかっていなかた時代に実際にあった話だが、男は、手術後、新しいことがまったく覚えられなくなっていた。人生という時計の針があるとき止まってしまったこの男は、それからの人生を「毎日、夢から覚めるようだ」と述べている。

 

感情がない人間は物事が覚えられない。

もう少し正確に言えば、感情的な色のない記憶は原理的に覚えられない。すべてRASさんがシャットアウトしてしまうのだ。

 

ある体験を記憶するためには、質か量か、どちらかが必要だ。

「質」は、その体験が絶対に忘れられないほど衝撃的であること。

「量」は、記憶の反芻が脳に焼き付けられるまで繰り返されること。

 

 

人生の目標を考えるとき、記憶の原理を理解することはとても大切である。

僕らは、人生で手に入るのは「望んだもの」であると思っているが、これは違う。

僕らが手にするのは、「手に入るだろうと期待したもの」だ。

そしてなにが手に入るかは、手を伸ばせば届くところになにがあるかによる。

 

これまで見てきたように、僕らの世界は昨日までの記憶から成り立っている。

昨日までに自分の感情を揺さぶってきたもので僕らの世界はできている。

これまで見たこともないものを手に入れようと思ったら、どうすればよいだろう?

 

 

人間は、見たこともないものは認知することができない。

ならば、「見た」ことにするしかない。

記憶を改竄し、未来の記憶をでっちあげてしまうのだ。

【祝10回!】コンシャス・アンコンシャスダブルバインド

さて、今回は祝10回記念ということで、いままでの流れをぶったぎって、当ブログ「ジェットスリッパーズ!」についての寄り道的小話をしていきたいと思います。

 

 

Q.    ジェットスリッパーズ!とは?

 

話自体はあまりうまくはないけれどやたら情熱的に心理学の話をしてくれる、でおなじみカウンセラー・石井裕之氏の著書『ダメな自分を救う本』に、スリッパの話が書いてありまして。ニートな自分の息子をなんとかしてほしい、という親御さんの相談を受けて石井さんが本人と面談した際、「自分を変えるために、なんでもいいから、どれだけ小さくてもいいから自分ができることをひとつ決めて、毎日続けてほしい」という話を本人にしたそうです。

 

その息子さんからでてくる「〇〇をする」というアイディアをまえに、石井さんは「本当に毎日できる?どんなに疲れてやる気が1ミリも起こらない日でも、できる?」と聞きます。男性が最終的に選んだのが、「毎日スリッパを揃える」ということだったそう。

 

毎日スリッパを「石井さんとの約束だから」とかたくなに揃える息子に不安を覚えたのか、石井さんは親御さんに怒られたそうです。「大の大人をバカにしているのか」と。結果的に息子さんは2か月で正社員の職を得ることになり、親御さんからも感謝されたと石井さんは自著に書いています。

 

ジェットスリッパーズ!は、その話に感動した望月が、スリッパひとつで人生を加速させる技術をまとめ、それを共有するコミュニティを立ち上げることを目的に設立したブログであります。

 

 

さて、石井さんのスリッパ話のなかにはいくつかポイントがあります。

 

ひとつ。近しい関係の人間はほとんどの場合、目標達成を妨害するということ。

このお話の中で、親御さんは息子さんに「べつにそんな下らないことしなくていいんじゃないか」と言葉をかけています。これは、親御さんのRASにとって、それがどれだけ不安になることであっても、息子さんがニートのままでいてくれたほうが、その不安が日常化している親御さんにとっては楽だからです。昨日までの世界を死守するためなら、RASさんは手段を選びません。

 

ふたつ。スリッパは社会復帰とはまったく関係がないということ。

石井さんが息子さんにスリッパを直させたのは、「コンシャス・アンコンシャスダブルバインド」を活用した療法のひとつであるといえます。難しく聞こえますが、これはいわゆるジンクスのことです。長いのでジンクス法とでも呼びましょう。

 

ジンクス法では、「スリッパを直す」という「自分でできること」と「社会的な自信を取り戻す」という「できなさそうなこと」を結びつけます。右足から玄関を出る、試合の前にカツを食べる、神社に毎日行く、目標に結び付けるジンクスは何でもよいです。いちど目標とジンクスが感情的に結びつくと、スリッパを直すたびに自信がつくようになります。

 

余談ですが、ジンクス法は他人への声掛けとしてとても有効です。

たとえば、とても動転して取り乱している友人に、あなたはなんと声をかけますか?

「ちょっと落ち着こう、ね。まずお茶でも飲んで、それから話を聞かせて?」

これもまたジンクス法です。この場合は「いますぐ冷静になる」という「自分では制御できないこと」に「お茶を飲む」という「できること」を結びつけています。深呼吸でもいいですし、自分の言葉を繰り返させてもよいでしょう。ジンクスはなんでもよいのです。

 

 

さて、肝心かなめの体験(記憶)と感情の結び付け方は…説明しだすと長くなってしまうので、順を追ってブログや冷やしコーチ会で解説していきます。

どうぞお楽しみに^^

 

 

本日の参考図書

石井裕之『ダメな自分を救う本』祥伝社

石井裕之『カリスマ 人を動かす12の方法』三笠書房

 

【9】記憶術「関連付け法」

ぜんかいのおはなし:

脳に届く情報は、RASさん(網様体賦活系)によって最小化されている。

RASさんのお仕事は脳の負担を最小化することなので、「昨日まで大事でなかった情報」はちょっとやそっとでは通してくれない。これが人間が変われない最大の理由のひとつとなっている。

だが、そこには裏道もまた存在する。

合言葉は、「強い感情」である。

 

 

面白い、悲しい、辛い、気持ち悪い、気持ちいい。

強い感情は俗に「記憶術」と呼ばれる一連の体系には欠かせない技術である。

記憶術は、どんなに興味のわかない事柄でも一瞬で記憶するための技術だ。

 

「つまらないこと」はRASさんが問答無用で弾いてしまう。

ので、そこには当然コツがある。

 

興味のわかないことをRASさんに通してもらうためのコツは3つ。

1.その情報をカラフルにイメージすること。

2.動画にすること。脳のなかでアニメみたいに動かすのだ。

3.できるだけ強い感情を結びつけること。

 

 

記憶術における感情の威力のすさまじさを体感してもらうために、実際にやってみよう。これは先日のオフ会でも紹介した「関連付け法」と呼ばれる記憶術である。

 

いまから以下の20この単語を脳に覚えてもらう。

 

1.電話

2.ソーセージ

3.さる

4.ボタン

5.本

6.レタス

7.ガラス

8.ねずみ

9.おなか

10.段ボール

11.フェリー

12.クリスマス

13.アスリート

14.鍵

15.家

16.赤ちゃん

17.キウィフルーツ

18.ベッド

19.はけ(刷毛)

20.くるみ

 

どうだろうか?

特に単語にも並びにも意味がないこの20こを完璧に覚えるのに、何分かかるだろうか?5分?10分?20分?

 

チャレンジしていただいてもかまわないが、もっと簡単に、以下の望月の文章を一読するだけですらすらいえるようになると思うので、あまり気張らずに下の文章を読み進めてみてほしい。

 

 

1.友達がバッグからとりだしたケータイが太いソーセージにしか見えない。耳に当ててべつの友だちと電話をしているのだが、さっき焼いたばかりなのか肉汁がてかてかに光っていて、友達の髪や耳が油まみれだ。電話をし終えた友達は、なんの躊躇もなく極太ソーセージをふたつに折り、「食べる?」とあなたに差し出す。差し出されたソーセージにからまっている、友達のであろう長めの髪の毛がちょっとだけ気持ち悪い。

 

2.動物園から逃げ出したサルが集団でスーパーの精肉コーナーを襲い、すべてのソーセージを奪っていった、というニュースがテレビで流れている。各地では同様の被害が広がっているらしく、なぜ精肉コーナーに群がり、しかもソーセージだけを奪っていくのか専門家による検証が急がれる、とニュースは言っている。

 

3.あなたは3匹のサルを飼っていて、最近では朝に着たい服をはおるだけで、あとはこのサルたちが上から下まですべてのボタンを留めてくれるという芸を仕込むことに成功した。3匹のサルたちがキーキーと服にぶらさがってボタンを留めてくれるおかげで、もうボタンは留めなくてもよいのだが、おろしたての服が早くもしわくちゃである。

 

4.あなたは『ボタン全集』という本を買った。古今東西すべてのボタンについての情報が詰まったボタン好きにはたまらない一冊なのだが、1ページ1ページがすべてボタンで留まっていてめくるたびにいちいちボタンをはずさなければならない。しかも硬くて、10ページもめくらないうちに指先が痛くなっている。

 

5.すえたにおいが自分の部屋に入ったとたんにすると思ったら、だれがやったのか、本棚のすべての本の1ページ1ページに腐ったレタスがはさんである。レタスは黒々と腐りきって糸を引いており、もう本棚ごと捨てたいくらいである。レタスをいちまい引き抜くと、切れて床にレタスだったものがべちゃっと落ち、黒い汁が足にはねる。鳥肌が立つ。

 

6.ガラスでできたレタスという装飾品が売っていたので、興味本位で持ち上げてみようとするが持ち上がらないくらい重い。店員さんが飛んできて、指紋のべったりついたガラスのレタスはもう売れないから130万円で買い取ってくれという。値段をきいた瞬間、あなたはどうしたら店員の目を盗んで少し離れた自動ドアから逃走できるか冷や汗をかきながら考え始める。

 

7.ワイン好きなあなたは、さっきから飲んでいるボトルワインの中身の減りが早いことをいぶかしんでガラスに亀裂でも入っているんじゃないかとボトルを持ち上げて悲鳴をあげる。ボトルの底にネズミが沈んでいるではないか! ワイン漬けになっているネズミは相当酔っぱらっていて、風呂にでも入っているように口をあけていびきをかいて寝ている。

 

8.あなたは手術によっておなかに大砲をとりつけられ、このへそ大砲からはネズミを発射することができる。人間兵器になってしまったことに絶望していたあなただったが、世界の危機にへそ大砲をふりかざして立ち向かう。あなたの最近の悩みは、おなかから匂ってくるいつまでもとれないネズミ臭さである。

 

9.浮浪者が段ボールをおなかに巻いているのだが、巻きすぎて道路をふさいでいる。あなたはきついにおいのせいで彼にできるだけ近づきたくないのだが、道路を通るためにホームレスのおじいさんに段ボールを脱いでもらえないかとお願いする。おじいさんはこのファッションに相当なこだわりがあるらしく、絶対に嫌だと主張してくる。なにかいうたびに飛ばすつばをかけられまいと、あなたはじりじり後退せざるをえない。

 

10.巨大なフェリーが段ボールでできている。段ボールでできているせいでどんどん海に沈んでいくのだが、そこに乗る多くの乗客はパニックになって我先にと救命ボートを奪い合っている。が、彼らは救命ボートもまた段ボールでできていることにいまだ気づいていない。

 

11.クリスマスツリーのうえに巨大なフェリーが乗っかっている。クリスマスツリーの飾りつけを任されたあなたはいつあの鉄の塊が自分たちごとクリスマスツリーを押しつぶすのか気が気でないのだが、いっしょに飾り付けている友達はなぜかそれに気づかない。ときおり聞こえるギギギギというとても重いものが傾くような鈍い音があなたの心臓を跳ねさせる。

 

12.クリスマス会の余興で、オリンピックで活躍したトップアスリートとほかの出席者たちが1500メートル走のタイムを競うことになった。陸上トラックにはクリスマスらしく雪が30センチも積もっており、足が凍りそうなほど冷たいやら疲れるやらであなたはぜいぜいいいながら走っている。トップに立っているのはなぜかあなたのおばあちゃんで、アスリートが必死の形相で雪をかきわけて後を追うなか、おばあちゃんは高笑いで引き離しにかかっている。

 

13.アスリートが世界大会で優勝し、純金のカギを渡されている。勝利の余韻を笑顔で表現しようとするが、アスリートの腕の中の純金のカギはあまりにも重くしかも自転車くらいの大きさで、アスリートはそれを掲げて落とさないようにするので精一杯である。

 

14.あなたの膀胱は爆発寸前だ。家のドアのまえで、あなたは襲い来る尿意に悶絶しながら家のカギを探しているが、ない。持ち物をすべてひっくりかえし、身をくねらせながら地べたにはいつくばってカギを探すが、ないものはない。

 

15.小さい家いっぱいに、巨大な赤ちゃんがひとり詰め込まれている。赤ちゃんは眠っているのか、その赤ん坊らしくない地鳴りのようないびきに合わせて小さな家が膨らんだりしぼんだりしている。

 

16.赤ちゃんを抱いたお母さんが、スーパーの試食係さんにもらったキウイを赤ちゃんに食べさせている。赤ちゃんはスライスされたキウイを手でつかんで食べるが、口いっぱいにほおばったところでスーパーの床に吐き散らかしている。お母さんの足元は吐き戻された緑色の液体にまみれている。赤ちゃんはまだ足りないらしくお母さんにキウイをせがみ、お母さんに「もうひとついいかしら?」といわれた試食係のお姉さんは店長が来る前に床を先に拭くべきか迷いながらもつまようじに刺したキウイをまたひとつ差し出している。

 

17.キウイフルーツがベッドでふとんをかけられて寝ている。あなたは布団の上からキウイをとんとん叩いて寝かしつけながら、『小さなキウイちゃん』という絵本を読み聞かせて添い寝をしてあげている。

 

18.ベッドが不要になったが、入り口がせまくて物理的に部屋の外に出せない。苛立ったあなたはなにを思ったかペンキとはけを取り出して、ベッドをまるまる壁紙の色のペンキで塗りつぶそうとする。それでもあなたは頭のどこかで、今夜はペンキがかちんこちんに固まったベッドに横たわって寝ざるをえないことを予感している。

 

19.くるみを割る適当な道具がなかったので、あなたは刷毛の持ち手の部分で割ろうとする。テーブルにくるみをおいて、木でできた柄の部分でがんがん叩くのだが、一向に割れない。振りかざした刷毛の柄があやまってあなたの左手の指を直撃してしまい、あなたは左手の指が折れていないか確認しようとするが、腫れあがった指を動かすその痛みに悶絶する。

 

 

さて、ここまで読んでいただいたところで、先ほどの20この単語リストを頭から暗唱してみよう。さいしょは?その次は?

 

調子が良ければ、最初から最後まで通して暗唱できるはずだ。

どこかで躓いた人は、どこかのイメージがうまくつながっていないので、そこを確認してもう一度チャレンジしていただいてもかまわない。

最後まで暗唱できた人は、ぜひ最後の単語から最初まで逆順で暗唱してみよう。これもすらすら出てくると思う。

 

 

断わっておくが、この単語リストにはとくに意味はない。

ダレン・ブラウン『メンタリズムの罠』からそっくり拝借したものだ。

単語リストはオリジナルで作ってみても面白いと思う。

 

大事なのは、なぜふつうに覚えようとしたらRASさんの妨害を真正面から受けるであろう20こもの単語リストを、ほとんど覚えようともしていないのに、1回文章を通して読んだだけで覚えられたのか、ということである。

 

 

記憶術には上のような「関連付け法」だけでなく、いろんな種類がある。

しかし、そのすべてに共通するのは、なんの役にも立たない単語リストをRASさんに「重要な情報」であると誤認してもらうための仕掛けがあるということだ。

 

その仕掛けのひとつは、間違いなく記憶と感情の結びつきなのである。

これは逆も言える。

僕らは強い感情と結びついた記憶を何度も再生し、無意識に忘れないようにしている。 

それがどんなに辛い記憶であったとしてもだ。

 

 任意の記憶と感情を強く結びつけて何度も繰り返させること、場合によってはそれをほどくお手伝いをすること。これが、コーチング技術の中核をなしている。

 

 

本日の参考図書

ダレン・ブラウン著 メンタリストDaiGo訳『メンタリズムの罠』扶桑社

 

【8】RASさんのお仕事

ぜんかいのおはなし:

脳が情報を受け取るかどうかの基準は、「いままでの自分にとって重要だったかどうか」である。

 

脳は目の前の世界を見る際、昨日までの記憶に照らし合わせて、重要だったものだけを選んで現実としてとらえている。その過程で、重要でなかったもの、あってもなくても変わらないものは無視される。

このとき、脳のなかで起こっていることを説明させてほしい。

脳機能としてその役割を担っているのは、視床下部(目の奥、脳の底の部分と視神経のつなぎめ)にある「網様体賦活系(Reticular Activating System)」と呼ばれるもので、縮めてRASと呼ばれることが多い。望月も親しみをこめてRASさんと呼ぶことにする。

 

このRASさんのお仕事はいままで見てきたように「重要な情報とそうでないものの仕分け」である。イメージは超有能な秘書だ。上司である脳のために、身体からあがってくる全情報をRASさんひとりで仕分けている。蓮舫さんもびっくりのスーパー秘書さんなのである。

RASさんは超優秀だが、秘書という役割ゆえにひとつだけできないことがある。それは、「考える」ということだ。RASさんのお仕事は与えられた基準に徹底的に従って情報を仕分けることであって、上司が与えたその基準に「どういう意味があるのか」を考えることはできない。

 

RASさんは僕らにいつも滅私奉公してくれているが、僕らがなにか新しいことを始めようとしたとき、まっさきに立ちはだかるのもこのRASさんである。

たとえば、僕らが外国語を覚えようとしたとしよう。

このとき注意しなければいけないのは、RASさんにとって、「昨日まで覚えなくてよかったこと」は、まったく重要ではないということだ。

RASさんは脳の仕事をひとつでも減らすためにあらゆる情報を削減しようとしているので、「昨日まで知らなくてもなんとかなっていた情報」はまっさきに捨てられる運命にある。

 

外国語を覚えようとすれば、なんとかしてRASさんを説得しなければならない。

いきなり外国に住んでしまうというのは、そういう点で有効な手段である。

その国の言葉を覚えなければ、パンひとつ買いに行けない。

 

まずい、このままでは本当に飢え死にしてしまう。

話せる人がいなくて寂しくて死にそう。

 

このようなとき、脳が「このままでは生きていけない」と判断して新しい基準へと切り替える。大音量のクラクションを鳴らしたトラックが突っ込んでくるのと同じレベルの緊急事態であると判断されるわけだ。

ひとこと付け加えるなら、一時的に脳に基準を書き換えてもらうだけなら、あまり難しいことは考えないでよい。「赤いものを探せ」という言葉ひとつで脳の基準が簡単に書き換わるのは体感してもらえたと思う。 

jetslippers.hatenablog.com

問題は、それを永続させたい場合だ。

「赤いもの」をRASさんの手を借りて探せるのはほんの一瞬である。

意識の上で基準を書き換えた程度では、それはすぐに赤いものに目もくれない「いつもの自分の基準」に上書きされてしまう。脳のなかに「まったく新しい基準」を植え付けて育てていくことはできない。

 

さて、とはいってもRASさんを説得するために、ほんとうに生命の危機を感じる必要はない。ようは、そんな事態に直面しなくても、命の危機を感知するセンサーにさえ引っ掛かればRASさんは基準を変えてくれるのだ。

そのセンサーもまた脳のなかにある。

 

「まずい、このままでは本当に飢え死にしてしまう」

「話せる人がいなくて寂しくて死にそう」

 

そのセンサーに触れるための条件を、うえのふたつの例文から読み取れるだろうか? 

ふたつの文章に共通する点があるとすれば、それはなんだろう?

 

 

答え。それは、強烈な感情である。

 

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追記:

昨日のオフ会にいらした方、来ていただきありがとうございました!^^


ひとのまえで話すと、自分のなかに貯めこんできたはずのものをあまりうまく説明できないことに愕然としてしまいますね(笑)


もっともっとうまくなりたいな。

【7】脳が拾う情報、捨てる情報

ぜんかいのおはなし:

僕らの目の前の「現実」は7割が視覚情報からできているが、視覚情報というのは目から入ってくる全情報の5%に過ぎない。

現実は情報の取捨選択によって大きく捻じ曲げられている。

 

 

人間の脳は、五感から大量に送られてくる情報のうちほんの一部しか受け取らない。

ここで問題になってくるのは、受け取られる情報が「どういう基準で選ばれているのか」だ。ばっさり切り捨てられる95%と、受け取られ「現実」に反映される5%の違いとはなんなのか?

 

一言でいうと、重要かどうか、である。

 

そんなの知っとるわ…俺だってテストに出なさそうな単語とか注釈とかは無視してテスト勉強するもん…。と思うだろう。

 

もうちょっと聞いてほしい。

問題の核心は、重要かそうでないかはだれが決めるのか、ということだ。

取捨選択の基準はいったいどこにあるのだろう?

 

ちょっとした実験をしてみよう。

 

 

いますぐに、目に入る赤いものを探せるだろうか?

3秒以内に。

 

赤いもの、見つけられた?

見つけられたら、次を読んでほしい。

 

たぶん「赤」と言われた瞬間になにかしら赤いものが目に飛び込んできたのではないだろうか。文房具でも、ビルの広告でも、隣の人の服でも壁紙でもなんでもよい。

 

 

さて、いまこの瞬間、望月の「赤いものを探せ」という言葉が、あなたの「基準」を書き換えたことがわかるだろうか。

 

「赤」という基準を設定されたあなたの脳は、ほかの情報を捨ててでも赤いものを探そうとし、だからいまはやたら赤いものが目に付くはずだ。

 

 

重要さの基準は簡単に書き換わる。そうとは意識せずに、人間はいつもいつも自分の中の重要さの基準をものすごい速さで書き換えているのだ。他人にいわれて書き換える場合もある。

 

そうでなければ、「犬って英語でなんだっけ?」と考えている最中に、大音量のクラクションを鳴らしながら突っ込んでくるトラックを見ても相変わらず「犬って英語でなんだっけ?」という思考をやめられないのだ。突っ込んでくるトラックに気づいた瞬間に重要さの優先順位を書き換えて「ヤバイ」と思わなければ命はない。

 

 

長くなってしまったが、答えである。

重要さの基準は、「いままで(ついさっきまで)の自分が重要だと判断したこと」だ。

だがそれは他人によって簡単に書き換えられうるし(これが自分で上書き不能にされると洗脳になる)、なにより自分自身が猛烈な勢いでいつも書き換えている。

 

目の前の現実を変えるにはどうすればよいのか?

一言でいうと、「昨日までの自分の基準」を「なりたい自分が持っているはずの基準」に書き換えればよいのだ。

コーチングは人生における「重要なこと」の基準を書き換えることで、本人にとっての現実を変えることを目指す技術なのである。

 

 

 やっと全体像の話ができた!

読んでいただいてありがとうございました^^

 

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本日、17~21時オフ会やります!

四谷駅徒歩4分の貸しスペーズで遊ぶ予定なので、ぜひ遊びに来てね。

(詳細はこちら) 

jetslippers.hatenablog.com 

【6】現実はどれくらい正しいのか

ぜんかいのおはなし:

自分がなにを考えているのか一歩下がって観察してみよう。

 

セルフモニタリングのエクササイズはこちら

jetslippers.hatenablog.com

 

自分の考えていることは、絶対ではない。

 

僕らのまえに立ちはだかる現実がどんなに強固な鉄格子のように見えても、その硬さのほとんど全部は僕らの思い込みである、という前提にコーチング理論は立っている。

ほんとうはそれはグミのようにぐにゃぐにゃなのだ。かみちぎって食べられる。

 

 

食べながら考えてみよう。現実とはそもそもなにからできているのだろう?

 

いまこの瞬間、僕らが全身で感じている「現実」は、割合として7割が視覚情報でできている。「なにを話すか(耳からの情報)」よりも「だれが話すか(目からの情報)」が大事だといわれるのはこのせいである。

 

 

ではこの視覚というのはほんとうに正確に現実を認識しているのか?

 

もちろん答えはNOだ。

 

目の前の情報すべてを脳に処理させてることはできる。

脳は潜在的には原発一基分の電力を消費できるスーパーハイスペックコンピューターである。脳にできないことなど存在しない。

 

それをしないのは、単に僕らの体が原発一基分の電力を供給できないからだ。

それをやられると僕らは数秒でかぴかぴにひからびて餓死してしまう。

だから脳にはリミッターがついている。

 

 

視覚情報もしかりである。

目から入ってきた情報は、95%が脳に届かない。

僕らの「見ている」この世界は、残りの5%の情報で成り立っている。

 

コンビニで立ち読みしようとした雑誌が、100ページあるうち5ページしか立ち読みできないとする。ほかは袋とじだ。なんてこった。

 

そのとき僕らは、本当にその雑誌を間違いなく読めているといえるのか? 

 

 

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 2017年5月19日(金)のオフ会情報はこちら!

感情や記憶をつかって遊びます!よかったら遊びに来てねー。

 

jetslippers.hatenablog.com